
呼吸器内科
呼吸器内科
これらの症状は重大な疾患につながる可能性もあるため、早めに受診することが推奨されます。
当院では下記診療スタイルで診療を行ってまいります
私は、医学部卒業後2年間の初期臨床研修を経て、大学の呼吸器内科の医局に入局しました。それ以降、呼吸器内科医として、大学病院や関連病院において10数年間、咳喘息、喘息などの呼吸器疾患でなく、肺がん、間質性肺炎など重い疾患も多く診てまいりました。咳は、呼吸器疾患の症状として最もありふれた症状のひとつです。咳を訴えられている患者さんが来院された際、まず問診で、「咳はいつから出てきたのか」、「咳以外の症状はないか」など咳の経過について確認させていただきます。続いて、診察において、パルスオキシメーターという血中酸素濃度の測定、聴診などを行なうことで、異常な所見がないかどうかを確認します。最後に、血液検査や、後述する呼吸検査を実施することで、確定診断に近づけていくというプロセスを行なっていきます。例えば、初診の喘息患者さんであれば、通常は1か月以上咳が長引いていることを訴えられて来院されることが多いです。そのうえで、咳の出始めの際には、発熱や喉の痛みなどの風邪症状をきたしていることもあり、さらに、過去に長引いた咳のエピソードを伴っていることも少なくありません。診察で血中酸素濃度の低下がないか、聴診で気道が狭くなることで生じる音がないか、最終的に呼吸検査で喘息に特徴的な所見を確認して確定診断に近づけていきます。典型的な喘息の症状、診察所見、検査所見という例が多いのですが、一方で、運動で喘息症状が誘発されるタイプ、COPDという喫煙関連の疾患を合併しているタイプなど、さまざまなタイプが存在しており、そのために、診断が難しいこともあります。喘息以外の疾患と診断して治療を始め、あまり効果がなく治療の経過中に、実は喘息であったという例もありました。また、咳の症状だからと言って、呼吸器疾患とは限りません。逆流性食道炎という消化器疾患でも咳をきたすことがあります。逆流性食道炎とは、強酸である胃酸が食道に上がってくることで、食道の粘膜が傷ついてしまい、胸やけや咳をきたすことがある疾患です。問診表で逆流性食道炎があるかどうか確認を行なうこともあります。呼吸器専門医としてのこれまでの経験(治療がうまくいったことも、そうでなかったことも)をもとにして、目の前の咳で困っておられる患者さんの、症状や生活の質(Quality of life: QOL)の改善に向けて、お手伝いをさせていただければと思います。
当院では、咳の原因を調べる検査として、①呼吸機能検査、②広域周波オシレーション法による呼吸抵抗検査(モストグラフ)、③呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)の設備があります。①呼吸機能検査は、吸気や呼気の空気の量を調べることで、呼吸器疾患がないかどうかを評価できます。例えば、喘息では、呼気の最初1秒間の空気の量である1秒量(FEV1)、その1秒量を呼気全体の空気量で除した数値である1秒率(FEV1%)が低下することがあります。一方で、同じ呼吸器疾患でも、咳喘息は、ほとんど正常であると言われています。
②モストグラフは、空気の通り道(気道)が狭くなっているかどうかを評価することができます。そして、狭くなっているかどうかの指標を「気道抵抗」と言います。喘息の患者さんでは、重症度にもよりますが、気道抵抗が高くなっていることが確認できます。モストグラフは、喘息の診断を行なう際にも用いますが、それだけではなく、治療中の効果判定にも有用とされています。
③FeNOは、呼気中の一酸化窒素の濃度を測定するという検査機器です。気道にアレルギー性の炎症が起こると、気道の内側の細胞(気道上皮細胞)が一酸化窒素(NO)を放出するため、喘息、咳喘息の患者さんでは呼気中の一酸化窒素の濃度が上昇することが言われています。そのため、両疾患の診断として用いることがあります。また、その治療中に、効果判定として、使用することが可能です。また、COPDという喫煙関連の呼吸器疾患を問診で疑っていた場合でも、FeNO上昇を認めた場合には、アレルギー性疾患である喘息の合併も判明した、というケースもありました。
全ての患者さんに実施しているわけではありませんが、症状の経過や診察所見などを考慮し、これらの検査を必要性に応じて実施し、より適切な診断や経過観察に繋がればと考えております。
これまで10年以上呼吸器内科医として患者さんの診療にあたってきましたが、ガイドラインやエビデンスに則った適切な診断と治療は重要だと考えています。日頃より新たな知識をアップデートしていき、より良い診療を目指していく姿勢は医師として重要です。そして、最新の知見を用いて、各々の患者さんにとって最も正しいと思われる検査や処方を行なうことは、大切なことと捉えています。ただ、それは、エビデンスをもとに医師から一方的に指示するようなひとりよがりなものではなく、医師から方針につき説明し、患者さんがその方針を希望されるかがより重要です。医師は、あくまで提案するに過ぎず、患者さんの意向が肝要です。限られた外来診療時間内で、十分なコミュニケーションが必ずしも確保できるわけではないですが、可能な限り患者さんからのリクエストに応えられればと考えています。困っておられる症状や、どのような検査や治療を望まれているのかを教えていただき、医学的な妥当性も踏まえて可能な限り要望をかなえられれば、私もうれしいです。医師がコメンテーターのように、患者さんへ意見をしたり、患者さんと意見をぶつけたりするのではなく、医師が患者さんの不安を受け止めてサポーターとなり、両者が同じ方向を向き、前進できるような医療を理想としています。目の前の患者さんの症状を改善させ、快適な日常を送れるよう、日々診療に臨んでいきます。ひとりでも多くのかたに、咳で困らず、満足していただける日々を提供し、診療内容に納得していただけるよう努めてまいります。
咳が出る疾患はさまざまで、呼吸器疾患だけではなく、前述しましたが、消化器疾患である逆流性食道炎でも起こり得ます。咳の症状で困って外来を受診されるかたのなかには、夜間に咳がひどくて眠られなかったり、咳の症状のために通勤や勤務先で周囲の目を気にされておられたりするかたも少なくありません。医療機関へ受診されるのは、本当に困ったり悩んだりされているからだと思います。咳が出る原因を突き止めて、病名や、どうして咳が出てくるのか、をお伝えできればと思っています。そのうえで、対処法や治療法についてお話しし、症状の改善や緩和に向けて治療を行ないます。喘息、咳喘息などアレルギー性疾患の場合など、その後の通院が必要な場合も多いので、その際には、可能な限り定期的な通院を継続しましょう。
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