
肺炎
肺炎
口や鼻から取り込まれた空気は、気管・気管支を通って肺に到達します。
肺の奥には肺胞という酸素と二酸化炭素を交換する組織がありますが、この組織が細菌やウイルスによって炎症を引き起こす状態を「肺炎」といいます。
肺炎は、咳、痰、発熱など風邪と似た症状がありますが、違う疾患です。
大きな違いは感染が起こる場所で、風邪の場合には喉で炎症がありますが、肺炎の場合には肺の感染症です。
風邪と肺炎は別の疾患ですが、上気道の炎症を引き起こしたウイルスや細菌が肺に入り込みやすく、肺炎の引き金になることもあります。
インフルエンザウイルスは、肺炎をきたすこともあります。
初期の段階では、風邪と似たような症状ですが、決して軽い病気ではありません。
肺炎は放置すると症状が悪化しやすく、呼吸不全をきたし入院する必要性もあるため、注意が必要です。
風邪で高熱、激しい咳が2~3日続く場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
肺炎の原因はウイルスや細菌などの感染症が原因になることが多いですが、カビや羽毛などのアレルギー、関節リウマチなどの膠原病、薬の副作用など感染症以外もあります。
病原体を吸い込んだからといってすぐに肺炎になるわけではありません。
免疫力が低下しているなどの要因が重なり合って、肺炎を引き起こします。
肺炎を引き起こす病原体は大きく分けて4つに分けられます。
これらの病原体が体内に入った時に、免疫力が低下していると、排出ができずに肺炎を発症します。
肺炎球菌、ブドウ球菌、抗酸菌などが含まれ、抗菌薬などで対応できる種類の菌もあります。
原因となる菌で一番多いのが肺炎球菌で、日本人の3~5%程度の喉、鼻に住みついています。
そのため、風邪などで抵抗力が低下した時や、食べ物を誤って誤嚥(ごえん)して食べ物や唾液と一緒に肺炎球菌を吸い込んで、肺に入ってしまうと肺炎のリスクが高まります。
細菌より、さらに小さく、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどがあり、抗菌薬は効きません。
カンジタ、アスペルギルス、クリプトコッカスなどのカビが原因で発症した肺炎です。
肺真菌症ともいわれます。
マイコプラズマは細胞壁がないため、細胞壁の合成を阻害する抗菌薬は効果が期待できません。
肺炎は細菌やウイルスなど感染症が原因で発症することが多いですが、感染とは別の原因で炎症を引き起こしている肺炎もあります。
何らかの原因で肺に炎症が起こり、それが慢性化することで、肺が線維化(硬く)してしまうこともあります。
肺は肺胞で酸素と二酸化炭素のガス交換を行っていますが、この肺胞の壁に炎症が起こり厚くなる(線維化)ため、ガス交換がしにくくなり、身体に酸素を取り込みにくくなる疾患です。
原因としては、アレルギー、膠原病、薬剤などが挙げられます。
また、原因が分からない、または原因がない特発性間質性肺炎では、50歳以上の男性にみられることが多く、生活習慣や環境なども関係していると考えられています。
肺水腫は肺に水が溜まった状態をいいます。
重度の肺炎や心臓疾患が原因になることがあり、肺の中にある肺胞の毛細血管から液体成分がしみ出した状態で、肺で酸素を取り込む効率が低下します。
重症化すると呼吸不全になることもあります。
唾液や飲食物が誤って気管に入ってしまい、その中にある細菌などが肺に入り込むことで発症する肺炎です。
特に、高齢の方に多く、飲み込む力、咳で外に出す力が弱くなることで発症しやすくなります。
また、誤嚥するのは、飲食物だけでなく、唾液に含まれている細菌なども肺炎の原因になりえます。
誤嚥性肺炎の多くは、口腔内の細菌が原因で引き起こされるため、口の中をきれいにして口内環境を整えることが大切です。
肺炎の検査は、咳や痰や発熱などの症状を確認したうえで、画像検査や血液検査を行って診断します。
まずは胸部X線写真で肺炎の影がないかどうかを確認します。詳しく評価したいときには、胸部CT検査まで行うこともあります。
肝臓より産生されるタンパク質で、炎症反応によって惹起されます。炎症反応の有無やその程度を確認することができますが、ただ肺炎による炎症だけでなく、その他の感染症や炎症性疾患でも上昇するため、判断には注意が必要です。
免疫機能をつかさどっており、感染症で上昇することが多いとされています。特に細菌性感染症の場合、白血球のうちの好中球が上昇します。
血中の酸素濃度(SpO2)を測定して、十分な呼吸ができているか測定します。肺炎の程度が強い場合には、SpO2の低下が見られることもあります。
呼気や吸気の容量を測定することで、呼吸機能の程度を評価します。感染性肺炎の場合には、あまり行いませんが、間質性肺炎を疑う場合には、状況をみて実施をします。肺活量の低下が確認されることもあります。
検査結果が出るまでに1週間以上かかりますが、痰の中の原因菌を特定する方法で、痰の中の細菌を培養して、数を増やして原因菌を特定しやすくします。
インフルエンザなどの検査で行われることが多く、鼻や喉の粘膜を擦過しインフルエンザや他の感染症がないか確認します。
検査結果は15分程度で出るため、来院時に検査結果を確認できます。
もしくは、尿検査を行い、肺炎球菌やレジオネラに感染していないか確認することも可能です。
肺炎の症状は、激しい咳、痰、喉の痛み、発熱など、一般的な風邪症状と似ていますが、症状が重く、期間も長い特徴があります。
風邪と比較すると、かなり激しい咳が続きます。
細菌性の肺炎の場合は、「黄色」や「緑色」の痰とともに出てくることが多く、湿った咳をします。
非感染性の肺炎の場合には、痰があまり出ずに乾いた咳が多くなる傾向があります。
また、高齢の方に多い誤嚥性肺炎は症状に乏しいことも多く、なんとなく元気がないということで発覚することもあります
気管支が炎症で狭くなった場合や、気管支の奥に存在する肺胞に水が溜まっていると呼吸をすることも負担になり、呼吸が苦しく感じることがあります。それを呼吸困難と呼びます。
その場合、息をするたびに「ヒューヒュー、ゼーゼー」などの喘鳴がすることもあります。
呼吸状態が悪化すると、唇が紫色になる(チアノーゼ)が出ることもあり、注意して観察しましょう。
肺炎で炎症があると、体温を上げて身体を守ろうとするケースがあり、場合によっては39度以上の高い発熱が出る場合があります。
発熱で汗が大量に出ると、脱水症状の心配がありますので、こまめな水分補給をしましょう。脱水症状が続くと、腎臓の機能が低下する場合もありますので、尿量が減っていないか注意が必要です。
意識が混濁する場合には早急に医療機関を受診しましょう。
激しい咳が長く続くと、筋肉痛のような胸の痛みを伴うことがあります。また、激しい咳のために肋骨が折れてしまうこともあります。
また、肺の炎症が外側の胸膜にまで広がると、強い胸の痛みを感じることもあります。
咳は喉や胸など広い範囲で痛みを生じることがありますので、痛みを感じたら早めに受診して相談しましょう。
肺炎は、原因によって治療方法は異なるため、まずは原因の特定を行います。
細菌は抗菌薬が有効であり、抗菌薬を用いて治療を開始します。
軽症の場合には、自宅療養しながら通院治療が可能ですが、重症の場合には入院して点滴や水分補給や酸素を投与することもあります。
また、症状の緩和の治療として、咳止め、去痰剤、解熱鎮痛剤を用いて対処療法を行う場合もあります。
抗菌薬や抗ウイルス薬は決められた日数服用することで、効果を発揮するためきちんと飲みきることが大切です。
症状が落ち着いたとしても、自己判断で服用を止めてしまうと、中途半端な投薬により抗菌薬に対して耐性菌ができてしまう可能性があり、今後薬が効きにくくなる場合があります。
そのため、薬は処方された通りきちんと飲みきりましょう。
肺炎の症状が続くと、激しい咳が続き体力が低下します。
また、原因になっている微生物によっては高熱が出る可能性もあり、抵抗力や免疫力が低下してしまいます。特に、高齢の方は体力を消耗して、原因菌に対抗する免疫力が維持できなくなり、悪化して重症化する場合があります。
そのため、身体をゆっくり休めて、休養を取りましょう。
高熱が続いて、激しい咳が出ている時は食事もしにくくなりますが、症状が少し落ち着いてきたら抵抗力を高めるために、消化のよい食べ物を少しずつ摂取しましょう。
最初はおかゆやうどんなどを少しずつ摂取し、栄養価の高いバナナなども効果的です。
また、高熱が続くと水分も大量に奪われているため、塩分と水分も意識してしっかり摂取しましょう。
肺炎の原因菌はいくつかありますが、その原因菌に感染しないことが大切です。
感染経路は空気中の菌を一緒に吸い込んだり、手などから口に入り込んだりしますので、原因菌を体内に入れないように対策しましょう。
基本的なことですが、うがい・手洗い、アルコール製剤による手指消毒、マスク着用などを徹底してください。
肺炎の予防接種として肺炎球菌ワクチンがあります。
65歳以上の方は、5年ごとの定期接種の対象になっているため、予防接種をして肺炎を予防しましょう。
また、毎年流行するインフルエンザウイルスも予防接種が効果的です。
免疫を獲得するまで2週間程度かかりますので、流行が始まる前に摂取しておきましょう。
また、必要に応じて、新型コロナウイルスワクチン、RSウイルスワクチンの接種もおすすめです。ワクチン全般に言えることですが、感染を完全に予防はできませんが、重症化を抑制することが示されていますので、是非ともご検討ください。
肺炎は風邪と似たような症状が出ますが、症状が重く、放置していると悪化して呼吸困難をきたすこともあります。
激しい咳や高熱が数日続く場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
また、肺炎を予防する肺炎球菌やインフルエンザなどのワクチンがありますので、接種して肺炎になりにくい体づくりをしましょう。
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