
睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸は、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気で、医学的に10秒以上呼吸が止まる状態が、1時間に5回以上認められる場合とされています。
睡眠中に何度も呼吸が止まるので、睡眠の質が低下して、朝起きた時にすっきりしない倦怠感が多く、日中の活動に影響が出る場合もあります。
男性の3~7%、女性の2~6%に確認されていて、一定数睡眠時無呼吸の方がいるのですが、自分で気づくことが難しいので、気づかずに過ごしている方も多いといわれています。
また、日中の眠気や倦怠感だけでなく、寝ている時に酸素が不足して、心臓、脳、血管などの臓器に負担をかけてしまいます。
そうすると、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などのリスクが高くなり、糖尿病や高血圧などにも悪影響を与えることが分かっています。
しかし、900万人程度睡眠時無呼吸の方がいると推定されているのですが、実際に治療を受けられている方は約70万人と考えられています。
治療をすると効果があらわれやすく、改善しやすい疾患なので周囲の方にいびきや無呼吸を指摘された時には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
睡眠時無呼吸の原因は大きく分けて2つあり、寝ている時に空気の通り道が狭くなってしまう「閉塞性睡眠時無呼吸」と脳から呼吸の指令が出なくなる「中枢性睡眠時無呼吸」があります。
上気道に十分なスペースがなく空気が通れなくなってしまい、呼吸が止まるタイプです。
睡眠時無呼吸の方の90%程度の方がこちらのタイプで、大部分を占めています。
閉塞性睡眠時無呼吸の原因として考えられるのが
などです。
肥満は首周りに脂肪がついて、上気道が狭くなり、気道がふさがりやすくなります。
また、仰向けに寝ることで上気道が狭くなっているところに、舌根沈下が起こり、さらに気道が狭くなって無呼吸の症状がみられます。
横向きに寝ると、いびきがおさまったと指摘される方もいるのではないでしょうか。
これは、仰向けに比べて横向きの方が、気道が広くなりやすいためです。
顎が小さいと、舌のスペースが少なく、空気の通り道が少なくなって気道がふさがりやすくなります。
鼻炎や蓄膿症などの鼻つまりを引き起こす疾患も注意が必要です。
鼻呼吸がしにくいので、口呼吸になり、いびきをかきやすくなります。
脳には呼吸を調整している部分があり、呼吸中枢といい、昼間も夜間も自然と呼吸ができています。
ただし、中枢性睡眠時無呼吸は「心不全」や「脳卒中」などが関係して呼吸中枢に異常が生じ、睡眠時に無呼吸の状態になる場合があります。
心筋梗塞、心筋症、高血圧、心臓弁膜症などが関係して心臓に負担がかかり、心臓の働きが弱くなると、全身に十分な血液を送れなくなってしまいます。
中枢性睡眠時無呼吸は心不全の合併症として発症しやすく、心臓の機能が低下した30~40%の方に中枢性睡眠時無呼吸がみられます。
脳梗塞や脳出血などが関係して呼吸中枢の働きが低下すると、呼吸中枢が上手く働かなくなり、上気道が狭くなっていないのに、睡眠時無呼吸の状態になる場合があります。
身体を十分に休息させるためには睡眠は大切なものです。
そして、睡眠時間だけでなく、良質な睡眠を確保することで身体も休まり、朝すっきりと起きられます。
しかし、睡眠時無呼吸の場合には、呼吸が止まっている間、身体の酸素が減っています。
走った時にも酸素が不足すると心拍数が上がりますが、無呼吸の場合でも身体の酸素が減ると心拍数が上がり、身体に負担がかかります。寝ている時なので自覚することはほとんどないですが、中枢や身体に負担がかかると、覚醒した状態になってしまい、十分な休息が確保できません。
その結果、睡眠時無呼吸の方は朝起きた時の倦怠感や日中の眠気などの症状が出てしまいます。
まずは簡易検査でスクリーニングを行います。
自宅で簡単にできる検査で入院の必要はなく、いつもどおり寝ていただきます。
就寝前に指先に検査する機械(腕時計のようなタイプもあり)をつけますが、少し圧迫感がある程度で痛みはありません。
この機械を使用して、睡眠時無呼吸の可能性があるか測定をします。
日常生活を崩すことなく、検査ができますし、費用も精密検査ほどかかりません。指先に付けた機械で動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定します。
また、いびき音や気流から気道が狭くなっていないか、呼吸状態が悪くなっていないかを調べる検査もあります。
重度の睡眠時無呼吸の状態が確認された場合にはすぐにCPAP治療に進む場合がありますが、睡眠データや脳波などの詳細なデータは確認ができません。
そのため、基本的には精密検査を行って、睡眠状態や呼吸の状態を把握してからその症状に合った治療を進めていきます。
簡易検査で睡眠時無呼吸の状況がみられた場合、精密検査を行いますが、寝ている時間の検査をするので、基本的には入院が必要です。
精密検査では睡眠と呼吸の質を測定する終夜睡眠ポリグラフを行います。
睡眠中の脳波や筋電図、眼球運動、咽頭マイク、パルオキシメーター、心電図、気流センサーなどの機械を使用して行われます。
検査ではいびきの程度、眠りの深さ、呼吸の状態、動脈血酸素飽和度(SpO2)脈拍の状態、脈拍などを測定します。
これらの機械を使いますが、寝ている間に測定が終わるので、痛みはありませんのでご安心ください。
また、病院によって入院に必要なものが違う場合がありますので、事前に確認しましょう。
睡眠時無呼吸は、鼻やのどの病気にも引き起こされることがあるので、
レントゲンやCT画像を撮影して疾患がないか確認する場合もあります。
CPAP治療は、寝ている間の無呼吸を防ぐために、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込んで、気道を広げておく方法です。
機械にチューブがつながれており、その機械から空気が送りこまれます。
重度の睡眠時無呼吸の方でCPAP治療を行っている方の方が、長生きできているデータもありますので、有効な治療法といえます。
現在は、睡眠時無呼吸の中度~重度の方に適応される治療です。
健康保険も適用できて多くの方の効果が実証されているので、世界的に広く行われている治療です。治療を開始すると、熟睡できるようになったと実感される方が多く、睡眠時無呼吸の標準的な治療です。
医療機関の機械を使用するのですが、適切にマスクを装着できるかも大切なポイントです。そのため、自宅で適切に機械を使用できるように、病院に入院をして機械の設定を確認する場合があります。
毎日自宅で使用する治療なので、分からないことは治療が開始する前に確認しておきましょう。
比較的軽度な睡眠時無呼吸の方に適用される治療がマウスピース治療です。
スリープスプリントともいわれ、下顎を上顎より出すようにマウスピースで誘導して、上気道を広く保ち、無呼吸やいびきの発生を防ぐ装置です。
スリープスプリントも健康保険の適用になる場合がありますが、睡眠時無呼吸の診断書が必要になりますので、担当の医師にご確認ください。
また、睡眠時無呼吸の治療に詳しい歯科医院でスリープスプリントを製作することをおすすめします。
ただし、軽度から中度の睡眠時無呼吸の方は効果が見込めますが、重度の方は効果が弱く、ほかの治療法がよい場合があります。
重症度をきちんと把握して、医師と相談した上で治療を開始しましょう。_
扁桃肥大やアデノイドなどの場合には、外科手術が有効な場合があります。
上気道が狭い原因を改善するために、口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を取り除いて気道を広げる手術です。
睡眠時無呼吸の方の半数で有効というデータがあります。
睡眠時無呼吸の大きな原因に肥満があり、太らないことが予防につながります。
喉や首に脂肪がつくと、上気道が狭くなり発症の可能性が高くなります。
今、睡眠時無呼吸ではなくても将来的に発症してしまう場合もあるので、適度な運動をして適正体重を維持しましょう。
また、睡眠時無呼吸の治療を開始している方は痩せることで症状が軽減しやすくなります。
お酒をたくさん飲んだ際にいびきをしやすいと思ったことはありませんか?
これは、アルコールによって筋肉が緩むためで、首やのど周りの筋肉が弛緩すると、上気道が狭くなりいびきをかきやすくなります。
そして、寝ることでも筋肉が緩むので、睡眠時無呼吸になりやすい条件が揃ってしまいます。日常的に寝る前に飲酒をしている方は休肝日を作って身体もゆっくり休めるようにしましょう。
アレルギー性鼻炎や蓄膿症などの鼻に関する疾患がある場合には、鼻づまりになりやすく、口呼吸になりがちです。
口呼吸と鼻呼吸を比較すると、口呼吸の方が、咽頭が狭くなるので睡眠時無呼吸のリスクが高まります。
また、口呼吸は歯並びに悪影響を及ぼしたり、風邪やインフルエンザになりやすくなったりなどさまざまなデメリットがあるので、健康のためにも口呼吸を改善しましょう。
睡眠時無呼吸は、たかがいびきと放置していると、心臓、脳などの臓器に負担をかけて心疾患や脳疾患を引き起こしてしまう可能性があります。
また、朝起きた時に倦怠感があり、すっきり起きられず日中の疲労感から仕事の効率に影響をしてしまう場合もあるのです。
まずは、クリニックを受診してご自分の状態を把握するために、睡眠時無呼吸なのか検査しましょう。
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